なぜカシミヤは“特別”とされるのか
肌に触れた瞬間にわかる柔らかさと、見た目の上質さ。カシミヤは、数ある繊維の中でも「最高級」と称される素材のひとつです。その価値の源は、希少性と機能性の高さにあります。
カシミヤは、カシミヤヤギのうぶ毛から作られます。特に寒冷地で育つヤギの毛は細く柔らかく、1頭から年間に採取できる量はわずか150g前後。1枚のセーターをつくるのに数頭分が必要になるほど、採取量が限られています。
それだけに、他のウール素材と比べて保温性は高く、軽量で、チクチクしない心地よさも特徴です。冬の装いをエレガントに見せるだけでなく、実用性にも優れているのが、カシミヤの真価といえるでしょう。
失敗しないカシミヤ選びのコツ
「カシミヤ100%」という表示があっても、品質はピンキリです。本物の良さを手に入れるためには、見極めのポイントを押さえておく必要があります。
まず注目したいのは“毛の細さ”と“長さ”。細いほど肌あたりがやさしく、長いほど毛玉になりにくいのが特徴です。高品質なカシミヤは、触れた瞬間にとろけるような柔らかさがあり、表面に自然な光沢があるのが目印です。
次にチェックしたいのは“編みの密度”です。カシミヤは柔らかい素材のため、編みが甘いと型崩れや伸びが起こりやすくなります。上質な商品は、見た目以上にしっかりと目が詰まっており、手に取るとしっかりした感触があります。
また、ブランド選びも重要です。信頼できる老舗ブランドや、繊維の原産地まで明示しているメーカーの商品は、品質管理もしっかりしているケースが多いです。高額な買い物だからこそ、“安かろう悪かろう”には注意が必要です。
長く愛用するための手入れと保管の基本
カシミヤはデリケートな素材ですが、正しいケアをすれば10年以上愛用できると言われています。日常の扱いからシーズンオフの保管まで、丁寧さが素材の美しさを守る鍵となります。
着用後はすぐにハンガーにかけず、平らな場所で軽くたたいて形を整えるのが基本です。毛羽立ちや型崩れを防ぐため、同じアイテムを続けて着ないようローテーションを組むのもおすすめです。
洗濯は基本的に手洗いが推奨されます。30℃以下のぬるま湯に中性洗剤を溶かし、優しく押し洗いするのがポイント。絶対にこすらないようにし、水を切る際も絞らずタオルで包んで軽く押さえるようにしましょう。
乾かす際は、平干しで陰干しが鉄則です。ハンガーにかけると型崩れの原因になるため、形を整えてタオルの上に置き、直射日光を避けて自然乾燥させます。完全に乾いた後は、柔らかいブラシで毛並みを整えてあげると、風合いがよみがえります。
保管時は防虫剤を入れた不織布の袋に入れ、圧縮せずにゆとりを持たせて保管します。湿気がこもらないよう、定期的に空気を入れ替えることも大切です。
こうした手入れの積み重ねが、カシミヤ本来の美しさと風合いを長く保つ秘訣です。良質な一着に手間をかける時間も、また大人のたしなみとして楽しめるものではないでしょうか。